本アーカイブについて
西浦の田楽調査プロジェクト
静岡大学情報学部 杉山岳弘研究室では、静岡県浜松市天竜区水窪町に伝承される民俗芸能「西浦の田楽」の保存および継承に資することを目的として、2016年より継続的な調査・記録プロジェクトを行っています。
西浦の田楽は、伝説によれば養老3年(西暦719年)に始まったとされる、長い歴史を有する民俗芸能です。現在に至るまで、地域の生活や信仰と密接に関わりながら、人々の営みの中で息づき、受け継がれてきました。
社会や生活様式が大きく変容する現代において、このような芸能がなお生きた文化遺産として存在しているという事実は、私たち一人ひとりに、「未来に向けて何を残すのか」という根源的な問いを投げかけます。急速に情報化が進む今日の社会のなかで、情報学を専門とする私たちには、この文化遺産を信頼性のあるかたちで記録し、次世代がアクセス可能な知の資源として手渡していく責務があると考えています。
記録映像デジタルアーカイブ
本研究室では、西浦の田楽調査プロジェクトの一環として、地域文化・民俗芸能に関する学術研究の支援を目的に、「西浦の田楽」の記録映像の撮影・蓄積を行ってきました。これらの映像資料は、研究者向けの映像アーカイブとして体系的に整理され、これまでは主に学術利用を前提として限定的に公開されてきました。
本サイトは、この研究者向け映像アーカイブを基盤に、その記録映像の一部をより広く社会に開かれたかたちで公開することを目的として新たに制作したものです。公開にあたっては、関係者の方々のご協力のもと、映像公開に関わる権利処理を実施するとともに、初めて西浦田楽に触れる方にも背景や内容がわかるよう、各演目に関する解説文を付しました。
本アーカイブの公開が、学術研究への活用にとどまらず、地域文化への理解や関心を深める手がかりとなり、広く世の中の皆さまに開かれた文化資源として活用されることを心から願っています。
記録映像について
本研究室では、西浦田楽の開催日にあわせて、2016年〜2020年、2024年、2025年の各年に演目の撮影を行ってきました。本サイトでは、これまでに撮影した西浦田楽関連映像について、撮影日、映像本数、記録時間を表にまとめて掲載しています。
撮影および映像の公開にあたっては、西浦田楽の信仰や祭礼の在り方に十分配慮したうえで、髙木八郎別当より公式な許諾を得ています。また、能衆や関係者の方々に加え、映像に映り込む一般の見学者の肖像権についても配慮を行っています。
詳細は別ページ『映像公開に係る権利処理』をご覧ください。
| 撮影日 | 本数 | 記録時間 (hh:mm:ss) |
|---|---|---|
| 2016年 2月 25〜26日 | 26本 | 3:40:07 |
| 2017年 2月 14〜15日 | 100本 | 11:42:57 |
| 2018年 3月 5〜6日 | 244本 | 38:09:15 |
| 2019年 3月 5〜6日 | 60本 | 9:00:01 |
| 2020年 2月 11〜12日 | 17本 | 3:40:07 |
| 2024年 2月 27〜28日 | 111本 | 23:54:59 |
| 2025年 2月 14〜16日 | 206本 | 54:08:03 |
※1 2021年〜2023年は、新型コロナウイルス感染症の影響により関係者のみでの開催となったため、一般的な記録撮影は行っていません。
※2 2018年、2024年、2025年は全演目の撮影を行いましたが、機材トラブル等により一部の演目については記録が残っていない場合があります。
※3 本研究室では演目以外に準備や関連行事の映像も撮影していますが、本サイトでは演目の記録映像のみを公開しています。
解説文について
各演目のリード文は、國學院大學兼任講師の櫻井弘人先生にご執筆いただきました。
映像再生ページに記載している各演目の解説文は、浜松市発行『西浦の田楽鑑賞の手引』(1989年)に掲載されている演目解説をもとにしています。これらの解説文については、髙木八郎別当の監修のもと、一部の表現を追加・変更・削除したものを使用しており、掲載に当たっては浜松市より正式に著作物利用許可(浜天水第74号)を取得しています。
本サイトの制作に関する学会発表
本サイトの設計および実装内容については、学術研究の成果として関連分野の学会において発表を行っています。 以下に、本サイトの制作および一般公開に関連する主な研究発表を示します。
西浦田楽記録映像の Web 公開に向けた
権利処理を考慮した映像公開管理システム
本発表では,西浦田楽の記録映像を一般に公開するにあたり必要となる権利処理の整理を行い,その方針に基づいて設計・実装した映像公開管理システムについて報告しました。
※本発表原稿の著作権は情報処理学会に帰属します。本サイトには,情報処理学会著作権規程に基づき,公開が認められている範囲で掲載しています。
西浦田楽記録映像アーカイブの一般公開に伴う
Web サイトの実装および運用における課題と対応
本発表では,一般公開用のWebサイトの制作において生じた技術的および運用上の課題を整理し,権利処理,UI設計,運用体制の観点からそれらへの対応について報告しました。
参考文献
- 櫻井弘人, 2019, 第一三三回民俗芸能公演『春むかえ 田峯と西浦の田楽』解説パンフレット「西浦田楽-太陽と月そして先祖への畏敬-」, pp.9–17, 国立劇場(2019年1月26日上演).
- 浜松市水窪恊働センター, 1989, 『西浦の田楽 鑑賞の手引き』.
- 山路興造, 1964, 「遠州西浦の田楽―民俗芸能資料」, 『民俗文化研究所紀要』, pp.9–16.
- デジタルアーカイブ学会, 肖像権ガイドライン(2023年4月補訂), https://digitalarchivejapan.org/wp-content/uploads/2023/04/Shozokenguideline-20230424.pdf (参照 2025年11月1日).
謝辞
本ウェブサイトの制作にあたって、多くの方々から多大なるお力添えをいただきました。
別当であり西浦田楽保存会会長を務められる髙木八郎様には、本ウェブサイトの公開にあたり、ご許可を賜りました。
また、髙木八郎様ならびに能衆の皆様には、記録映像の撮影および公開に際して、多大なるご理解とご協力をいただきました。
さらに、國學院大學兼任講師の櫻井弘人先生、松蔭大学コミュニケーション学部准教授の伊藤高雄先生、飯田市美術博物館学芸員の近藤大知様には、専門的な見地から貴重なご助言と情報提供を賜りました。
加えて、浜松市市民部文化財課の皆様にも、多くのご協力をいただきました。 本ウェブサイトの公開にあたりお力添えくださった全ての皆様に、心より深く御礼申し上げます。
連絡先
西浦の田楽調査プロジェクト
静岡大学
大学院総合科学技術研究科 情報学専攻/情報学部
杉山岳弘研究室